第3章 不幸少女
「ま、そんなとこかな。」
黒川さんはニッコリと笑った。
段々と、見分けがつくようになってきた。
この人が本音を話している時と、話していない時の顔。
今は…多分何かを隠してる。
「黒川さんにとってその女性は…どんな存在だったの?」
「ただの知り合いだよ。」
これは多分、嘘。
だけど、これ以上は聞かない方がいい気がした。
「シュリ。うちにおいでよ。」
優しさを含んだその口調に、私は小さく頷いた。
きっとその女性は、黒川さんと関係が深かったのだろう。
そして黒川さんは、私を通してその女性を見ている。
いつか…話してくれる時が来るだろうか。
ただ、黒川さんがとても孤独で寂しい人に見えて。
そんな彼の傍にいたいと思う自分がいた。
これは、恋でも愛でもなくて。
ただ、私も孤独だから。
孤独な者同士の傷の舐め合いだ。
翌日、私は荷物を纏めて黒川さんのマンションで生活を始めた。
私の仕事が見付かったら戻れるようにと、黒川さんは私のアパートの家賃を払い続けると言ってくれた。
私が彼に出来ることは何も無いのかもしれないが、それはこれから自分なりに探していこうと思う。