第20章 気づけよBaby
今日は満月の日。
艦の甲板からあなたと二人並んで眺める月はとても大きくて、かぐや姫でも降りてきそうな、まるでおとぎ話の中に迷い込んでしまったよう。
移り変わりのない生活模様だけれど、あなたがいるのといないとではとても大違いで、あなたがいないと日常も世界までもが変わってしまったような気持ちになって、まるで世界が軋んでしまったみたいです。
いつも何も語らず遠くを眺めながら煙管を咥えるその唇、そしてたまに深く吐息を漏らす姿を思い浮かべただけで胸がきゅうっと締め付けられたような気分になります。
ふと隣に並ぶ愛しい人を見ると月に照らされた青白い顔がなんとも妖艶で美しい。
もっとわたしを見て、
熱く熱く
そう想いを込めると、あなたのとても甘い抱擁に酔いしれて身を任す。
きつく形すらまた失うほどに。
「…ーーーーー」
あなたの色っぽい唇から吐き出される嘘は交わり辺りにこだまして、けれどわたしはそれすらも受け入れてしまいたくなるんです。
わたしはあなたの全てで息をしているから。
それに気づいて欲しくて、どこにいたってわたしは月にあなたの姿を重ねて見つめているのだから。
本当はそれがたまらなく怖いなんて口が裂けても言えません。
きっと。
~ 気づけよBaby ~