第8章 あなたと永遠に……謙信side3
退屈しのぎに散歩をしていたらかおると出会った。
しばらく立ち話をしていると風に乗って祭り囃子の音色。
祭りに興味を持ったのか
かおるの瞳は幼子のようにキラキラと輝いている。
たかが祭り如きにそこまで反応するとは
多少呆れてしまうが、特にやる事もない俺は気まぐれにかおるを祭りへと誘ったつもりだったが__
賑わう境内に入ると楽しそうにはしゃぐかおるを見ていると俺まで心が浮き立つ。
何故この俺の心が浮き立つのだ?
……わからん。
祭りなど大して興味が湧くものでもない筈だが__
「……いない」
しばらくするとかおるのはしゃぐ声が聞こえない事に気付く。
この俺がせっかく案内をしてやっているというのに、何故勝手に姿を消すのだ
けしからん
このまま迷子にさせとくか
いつもの俺なら迷う事なくそうしているんだが……
何故だ?
勝手に足がかおるを探しに行こうとしている。
矛盾している俺の心と身体
俺にとってかおるとは……
一体なんだ?
辺りを見回しながらかおるの姿を捜していると座り込んで水面を睨みつけている。
聞けば金魚すくいとやらをしていると言う。
よほど金魚が欲しいのか?
そんなに睨みつけていては金魚が怯えて逃げるだろう。
欲しければ来いと命令すれば来るであろうに
(俺が命令したらすぐに集まって来たぞ)
掴まえた金魚を複雑そうに笑いながらも、愛おしそうに見つめるかおるを見ていた俺の心が何故だか知らんが__
ざわつく
この甘美なざわつきはなんだ?