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人外王の花嫁

第5章 魔物の王


転移装置の中を移動する。何時も不思議に思うのだけれど、これってどうなってるのだろう。キリヤ様に聞いたら魔力と科学の融合によるもので…何だか難しい事を言っていて私が理解出来ずに呆けていると、しっかり聞いていないと怒られた。

淡い光の中を歩いて行く。この光を進むとそれを抜けた所に出口がある。その淡い光が今日は何故かブレた。昔のテレビで有った砂嵐の様に、ザザッと歪んで揺れたのだ。
でもそれはほんの一瞬の事だったから、魔物の国のお迎えの人達も特に気にせずに前へと進んだ。

花の香りに包まれていたキリヤ様の国の香りが薄くなっていく。空気が変わっていくと、寂しさに胸が痛んだ。私はキリヤ様やオルガとのお別れに涙ぐんだ目元を手の甲でゴシゴシと擦った。

今日からはルナール様の国でお世話になる。
ルナール様とも仲良くなれると良いな。

私は頑張ろう、と気合を入れ直して転移装置の出口へと足を進めた。




「お待ち致しておりました、姫様!」

眩しさに閉じていた目を開けた。するとそこは神殿のような場所で、辺りには水路が敷かれていて水が流れている。
そんな場所で頭を下げていたのは、水の塊のような…向こうが透けて見える透明な人間。でもしっかりと人で言う老人の形を作ったスライムだった。

「私はルナール様のお世話係のナグルでございます。宜しくお願い致しまする」

立派な髭をたたえたお爺さんなナグル様に慌てて頭を下げ返した。

「ショウコです。こちらこそどうぞ宜しくお願い致します」

「ショウコ様はしっかりとご挨拶が出来るのですな。何と素晴らしい…それに比べてルナール様は…」

ブツブツとナグル様が不満そうにぼやいている。ルナール様と聞いてナグル様が向いた方向へと視線を向けた。そこには色の無い透明なスライムのルナール様が居た。

ルナール様はこちらを見ずにそっぽを向いて何処か一点をぼーっと見詰めている。この場所に居るのもしょうがないからいる、と言った感じで私にも全く興味が無いみたい。
それでもお世話になるのだからしっかりとご挨拶しなくちゃいけない、と私はルナール様の前へと移動すると頭を下げた。

「ルナール様、お世話になります。どうぞ宜しくお願い致します」

するとルナール様の興味の無さそうな瞳がチラリとこちらを見た。そして私と視線が重なったかと思うと、小さくコックリと頷いたのだった。
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