第2章 審神者見習い
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その日は朝から何かと騒がしかった。
燭台切光忠は二つのネクタイを何度も男の首元に当てがっては唸り、その横では何としてでも布を守らんとする山姥切国広と、新しい布に変えるべく奮闘する歌仙兼定がいた。
「うーん、どっちがいいかなぁ…」
「どっちも一緒じゃねーか…」
「ちょっと!いい加減にしてくれないか?!」
「それはこっちの台詞だ!そろそろ諦めたらどうなんだ!」
ギャーギャーわーわーと騒がしい四人に、しかし他も負けじと騒がしい。
本丸内の彼方此方で声が飛び交い、ぱたぱたと忙しそうに駆ける姿がさっきから何度も目の前を通る。
「ねー、これどこー?」
「誰かこっち手伝ってー」
「おい、三日月のじいさん消えたぞ!」
「あんのじじい…!このクソ忙しい時に!」
ーーーさて、何故こんなにも本丸内が騒がしいのか。
その理由を今から説明しよう。
最近、政府が新しく取り入れた制度がある。
審神者研修というものだ。
審神者研修とはその名の通り、審神者見習いが実際本丸で1ヶ月ほど過ごし、審神者の何たるかを学ぶことを指す。
今では審神者になるための講義なんかもあるらしい。
すべて、男が審神者になる時にはなかったものばかりだ。
その審神者研修に、男の本丸が選ばれたというわけである。