第2章 【透き通る星空日和】菊丸英二
『璃音!今すぐベランダに出て空見上げてみて!』
突然、夜更けになった彼からの着信電話。
何事かと思って慌てて出たところで聞こえたこのセリフ。
『早く早くっ♪部屋の電気、ちゃんと消してからね!』
そう急かされてよくわからないままに、慌てて電気を消してベランダに出ると、そこに広がっていたのは透き通る星空。
「わぁ、すごい、キレイ!」
思わずそう歓喜の声を上げると、東京でもこんなにキレイに星が見える日ってあるんだね、そうウットリとしながらしばしその星の瞬きを堪能する。
『だろ?オレ、気がついたらすぐに璃音に教えたくなっちゃってさ♪』
オレからのプレゼント、この星、ぜ~んぶ、璃音にあげるよん♪なんて電話越しに言う彼に、こんなすごいプレゼント初めて、そうふふっと笑ってまた星空を見上げる。
気に入った?そう言う彼に、んって小さく頷いて、でも、せっかくだから英二くんと一緒に見たかったな、なんてそっと呟く。
『んじゃさ、今度は下、見てみて?』
下?そう不思議に思って見下ろすと、そこに見えたのは頭上の星々にも負けない、キラキラ輝く瞳で私を見上げる彼。
急いで上着を羽織り階段を駆け降りて外に飛び出すと、両手を広げて嬉しそうに笑う彼の胸に勢いよく飛び込む。
「びっくりした?」
「びっくりした!」
璃音、あったか~い♪、そう満足そうに私を抱きしめる彼の身体は凄く冷たいんだけど、それでもとっても温かくて、嬉しくて彼を抱きしめ返す腕に力を込める。
「もう、風邪、引いちゃうよ?」
「大丈夫、オレ、バカだから♪」
「バカでもしっかり風邪引きます!」
「ひでー、そこは否定するところじゃん?」
そしてお互いの顔を見合わせクスクス笑いあうと、もう一度2人で空を見上げる。
見上げた星空はどこまでも透き通っていて、お互いの温もりとともに、2人の心に染み渡って行った。
【透き通る星空日和】菊丸英二