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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第8章 小さな小さな披露宴




最初は、
彼女があの男性の奥さんだとは
知らなかった。


病院の廊下で
大きな荷物を抱えて歩く人の姿は、
珍しくない。

たいてい、退院する患者の迎えの家族か、
その逆…退院できずに亡くなった人の家族だ。

彼女の場合、明らかに後者で…

よほど疲れていたのか、
壁際の長椅子にフラフラと座り込んだ拍子に、
荷物から転がり落ちたプラスチックコップが
俺の足元に転がってきた。

コップを拾い、彼女に渡す。

『大丈夫ですか?』

『あ、すみません。ありがとうございます。』

『少し休んでいかれた方が…』

『いえ、次のバスに乗らないと帰れませんので。
お気遣いいただき、ありがとうございます。』

と立ち上がったものの、
またすぐに座りこんでしまう。

『あの、もしよかったら、
ここで待っててもらえませんか?
あと15分したら俺、仕事終わるんで、
車で送りますよ。
荷物も多いし、雨も降りそうだし。』


目の前の自販機で
熱いコーヒーを買って黙って渡し、
返事は聞かずにその場を後にした。

…聞けばきっと、断るだろう。
どうするかは彼女の自由だ。

もし待っていれば、送る。
待ってなければ、送らない。
ただ、それだけのことだ。

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