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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



トゥルルルル…
シンプルなコール音。

いつものとおり、日曜、夜11時。
いつものとおり、1コールで聞こえる声。

『もしもし!』

あぁ、今日は納得いく仕事が出来たんだな。

『もしもーし。』

…転勤して三ヶ月。
毎日が飛ぶように過ぎていく。
仕事の人間関係、ここでの生活にも
やっと慣れてきた。

土日は、
家の事、接待ゴルフ、
生活を整えるための買い物、
この街のリサーチ…
などで、なかなか連休はとれず。

離れてから、
まだ俺達、1度も会えていない。

転勤して1ヶ月過ぎた頃、
電話越しにアキが言った。

『ねぇ黒尾さん、夏休み、
あわせてとりましょうよ!
ちょっと旅行とか行きません?
その時の楽しみにしたいから
それまで逢わずにいたいなぁ。
…逢ったとき、
黒尾さんが離してくれないかも(笑)』

『くっついて離れないのはアキだろーが。』

『淋しがりやのくせにぃ!』

…俺は転勤になってしまったこと、
アキはついてこれなかったことに
お互い、後ろめたさを感じていて

それを口にしたら"ごめん"のやりとりに
なることはわかっている。

俺が今の生活に精一杯なことも
アキにはきっとお見通しのはずで。

だから、
あえての"夏休みまで会わない作戦"
…アキの気遣いだとわかるから、
従うことにした。

『そのかわりさ、』

俺が交換条件で出したのは
"日曜の夜の11時は
必ず電話で話すこと"

アキは、土日の夜はいつも
結婚式の後だからテンションが高い。
週末は話したいことがたくさんあるって
わかってる。

その相手を俺がしたくて。
俺のこっちでの生活も聞いてほしくて。

"もしもし"

たったこれだけの言葉で、
アキの気持ちが手に取るようにわかる。

弾んだ声の日は、
いい仕事が出来た日。

興奮した声の日は、
予想外のことがあった日。

落ち込んだ声の日は、
思い通りにいかなかった日。

うんうん、それで?そうかぁ…
そうやって電話越しに話を聞きながら、
話すアキの表情を思い浮かべると

触れたくて、触れたくて。

頭を撫でたり
背中から抱き締めたり
頬をつまんだり
手を繋いだりしながら
話したい。

そのまま、キスをしたい。

だから、
電話の最後に、

つい。

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