第27章 ウェディングプランナー
プシュ。
…音で目が覚めた。
薄暗い。
私の部屋より広い。
そして…隣に人の気配。
『あ、わりぃ。起こした?』
缶ビールを握る黒尾さん。
…一瞬で、全てを思い出す。
誘われて、ホテルに来て、
挑発したけど結局リードされて、
最後は、意識がない。
何を言えば、
どんな顔をすればいい?
失礼なことを言ったし
恥ずかしいところを見せてしまった。
…とりあえず、謝ろう。
『あの、ごめ…』
『謝ったりすんなよ?』
言葉を遮られる。
『あんた、謝るようなこと、
何もしてねーから。謝んな。』
缶ビールを飲みながら
なんでもない顔で言う。
私には触れもせず。
紳士だ。
一度寝たからってベタベタしない。
ほんの数時間、一緒にいただけ…
…ハッ。
数時間って、何時間?!
枕元のデジタルは
02:18
二時間以上、寝てたんだ。
終電逃した…
『黒尾さん、明日、仕事ですよね?
すみません、寝すぎました。』
『俺は始発で帰れば大丈夫。あんたは?』
『私も、大丈夫です。』
『じゃ、心置きなく眠れよ。俺、起こすから。』
『…黒尾さん、眠らないんですか?』
『俺も、今まで寝てた。
喉乾いて起きたとこ。あ、飲む?』
缶ビールを差し出される。
『水にしときます。』
冷蔵庫に向かおうとしてあわてる。
…全裸だ…バ、バスローブ…
ちょっと!なんであんな遠くに?
…って、私があそこで脱いだからだよっ!
イチイチ、自分に腹が立つ。
足で引き寄せようと苦労してたら
黒尾さんが笑いながらベッドをおりて
『ほら。』
バスローブを拾ってくれた。
…黒尾さんは、ちゃんと着てる。
なんか悔しい。
しかも
あわてて袖を通した時には
すぐそこに水があった。
きちんとグラスに注いである。
『…すみません。』
『なにが?』
『何から何までお気遣い頂いて…』
『そう?』
『…黒尾さんの彼女は、幸せですね。』
『…そうでもねぇみたいだから
あんたに世話になったとも言えるけどな。』
あ。地雷、踏んだかも…
『…ごめんなさい。』
私の隣に、黒尾さんが並んで座った。
白いシーツ。
白いバスローブ。
暗い部屋に浮かび上がる、
無限の色、白。
恋のピンク。
輝きの黄色。
青春の青。
新鮮な緑。
情熱の赤。
艶の紫。
そのどれでもない私達。