第7章 認めたくない事実もある
「うわっ、39℃だって…高熱じゃないか」
体温計を見ながら山崎さんが言った
さ、39℃…!?
だからこんなに息苦しいのか…。
なんか…身体も熱いしだるいし、頭痛いし、喉も痛い…
『あぁー…もう全てがどうでもいいー』
「なにネガティブになってんの!」
今日は山崎さんのツッコミすら頭に響く
何でよりによってこんな天気の良い日に風邪なんて引いちゃったんだろ。
まあ、考えられる原因はこの前の嵐だとは思うけど…
あの日からもう1週間だし…。
『先週は何ともなかったのになぁ…』
「そう思って油断してたから風邪引いたんだよきっと」
『…せっかくのオフなのに』
「逆に良かったんじゃない?今日のうちにしっかり休んでおいて、また明日から頑張ればいいよ」
『そうですけど…』
山崎さんにお粥が入ったお椀を渡されしばらくそれを見つめた
「…どうしたの?」
『今日は…お墓参りに行くつもりだったんです、平河隊長の…』
私の言葉に山崎さんは黙って俯いた
2年前、平河隊長が死んだ日から私は決まって毎月彼のお墓参りに行く
だけど近藤さんや土方さん達は最近あまり行かなくなった
"今までも戦死した仲間は大勢いる、あいつだけが特別じゃねぇ…"
土方さんはきっと引きずるなって言いたかったんだろうけど、まだ私は彼の死を受け入れることすら出来ていないのかもしれない。
「結衣ちゃん?」
『あ、すいません……少し思い出しちゃって』
涙が出そうになるのを必死に堪えているせいで山崎さんの方を向くことが出来ない
「…大丈夫だよ結衣ちゃん。きっとみんな同じ気持ちさ」
『…』
「事実は変わらないし、心の傷も深い…それでも少しずつ、ゆっくりでも前を向いて進んで行けばいいんだ。きっと俺達なら出来るよ」
そう言って頭を撫でてくれた山崎さんに頷いてお粥をゆっくりと口に入れた
『…美味しいです』
「良かった!味薄くないか心配だったんだ」
『これ…山崎さんが作ってくださったんですか?』
「あ、うん!女中さん達みんな忙しそうだったから…それに俺今日非番だし!!」
言いながら山崎さんは頬を少し赤くして頭を掻いた
『女子力ですね…(呪)』
「あれ、そっち!?ていうかカッコの中怖いんだけど!!」