第15章 想う分だけ想われる【沖田視点】帰省編②
「アイツは…幸せモンですねィ」
「え?」
「アイツがここを嫌うのは自分の居場所がこの家に無かったからかと思っていたが…ここに来てアイツのこと明るく迎えてくれるアンタらがいて…すげェ愛されてんだなって思った…」
「それは…私達は皆、結衣様のことが大好きですから…」
「俺はそれで充分だと思いやすけどねィ…」
「え?」
「俺達真選組は常に死に近い場所にいて、お互いにいつ死ぬかわからねェ生き方をしてる。ただそんな人生の中でも護るべきものさえ護り通すことが出来たら、それで充分じゃねーかって思うんでさァ」
俺もそうだ。アイツが…
- 沖田隊長! -
もう二度と悲しい顔をしなくて済むのなら
- 沖田隊長…結衣を頼みます -
あの約束を守ることが出来るのなら
「それ以上は…何も望まねェ」
「…沖田さん」
自然と口から出た言葉にハッとなった
「まぁ、その…つまりあいつはアンタらに恩を返してほしいなんて思っちゃいねェ。ただ…今日みたいに温かく迎えてもらえんのが一番嬉しいんじゃねェかって思うんでさァ」
そう言った俺をお菊さんはじっと見つめる
「…俺なんか変なこと言いやしたか?」
「いえ、ただ…貴方は結衣様のことをよく見ておられるのですね…」
「そ、りゃあ…一応あいつの上司なんでねィ」
「…そうですか。でも何故結衣様が貴方を慕っているのか今わかった気がします」
「…?」
「似てるんですよ、結衣様が心の底から慕われていたある御方に…」
「!」
お菊さんの言うその人物は…俺には嫌でもすぐに誰かわかった
「あの方といる時の結衣様はいつも楽しそうでした…。私達も見たことがないような色々な表情をしていらしたのです。そして今日、貴方の隣で笑う結衣様を見た時…あの頃と同じだなと…。驚いた反面…すごく安心しました」
そう言って微笑むとお菊さんは俺の方を向いて頭を下げた
「沖田さん、どうか…結衣様をお願い致します」
なぁ、大石。
「…お菊さん、」
「?」
俺にはあいつの…平河の代わりになってやるなんてことは出来ねェけど、
いつかお前の隣を歩く誰かが現れるその日までは、
「ちと、頼みてェことがあるんですが」
俺がお前の傍にいてやるよ。