第7章 amazingがamazingでなくなったとき ー日々樹渉ー
「……怒っていますか?」
「…」
「置いていってすみませんでした…」
黙りこんだ私に話しかけてくる日々樹さん。私は目をそらした。
「あんずさん……」
「タイミングが……」
「え?」
「わからない………」
顔が真っ赤になっていくのがわかる。そして、日々樹さんの頭の上にクエスチョンマークが浮かぶのも。
結局私はズンドコズンドコ先へ行ってしまう。
「あんずさん、私はまた何か…?」
そう言って私の方の肩をつかもうと差し出されたその手を見て
今だっ!!!
私はその手を掴んだ。
顔が更に赤くなる。
「あんず…さん……?」
「手!手を、つないで、帰りたい……なー…」
だんだん小さくなっていく声。何言ってんだ、私。
掴んだ手を離そうとすると日々樹さんがグッと握ってきた。
「はい、ではそうしましょう!何なら歌って差し上げましょうか!?聞いてください、amazingの歌…☆」
私の手を振り回して声高らかに歌い出す日々樹さん。
その歌声が私の耳に届いては消えていき、新たな主旋律が心地よく響く。
日々樹渉なんてこの人にピッタリな名前!
私は日々樹さんの手をブンブン振り回して日々樹さんの声を家に着くまで聞いていた。