第14章 【縁下兄妹、東京へ行く】後編
それだけでも尾長はマジかとなるのに影山が横で顔を青くしているので更に驚く羽目になった。
「俺いっぺんままコの事可愛くないスマホオタクって言っちまって縁下さん滅茶苦茶怒らせた事がある。」
「そりゃ大変だったな。」
「死ぬかと思った。」
カタカタ震える影山を見て尾長は思わず山口に目をやった。
「縁下さん普段は本当にまともだから。」
この時尾長は一応は笑っている山口からも苦労を感じたという。
一方力は木下と成田を引きずったままとうとう木兎と赤葦、そして義妹のもとにたどり着いていた。木下達を援護しようとしてしきれなかった田中と西谷もおまけでついている。
「美沙。」
「あ、兄さん。」
義妹はまたも木兎に抱えられて頭をワシャワシャされている所だった。
「ごめんよ縁下君、止めきれなくて。」
「いや赤葦君は悪くないから。すみません木兎さん、妹を離してやってください。」
木兎はえーと不満げにする。
「まだ話してんのによー。」
「それは構わないんですがうちの子は抱きまくらじゃないので。」
「抱きまくらってもっと柔(やわ)くね。」
あーっと田中が叫ぶがもう遅かった。悪気がない分タチが悪いかもしれない。赤葦が木兎さんと軽く咎めるように呟くも木兎はわかっちゃおらず力の顔からは表情がなくなって引きずられる形でついてきた木下が慌て西谷ですら力の目がやべえっと叫び、成田が落ち着けってばと力の肩を掴んで揺さぶる始末だ。
「すんません木兎さん縁下妹について女子っぽくねえとかヒョロヒョロとかガリガリは禁句なんでよろしくお願いしゃっすっ。」
「力は美沙大好きなんで事実でもぺったんとか言ったら俺らでもやべえっす。」
「むしろこの瞬間に西谷君の寿命がヤバそうだけど。」
「西谷お前帰り覚悟しといた方がいいぞー。」
「何でだよ久志っ。」
大騒ぎする烏野2年生陣と無表情のままの縁下力、木兎は尚も美沙を抱えたままそれをじーと見ていたがやがて美沙に視線を戻してわっはっはと笑い出す。
「愛されてんなーままコ、良かったな。」
あうあう状態になりながらもありがとうございますと呟く美沙を木兎は力の方に戻す。戻すのはいいがドンッと押したのはいかがなものか。