第66章 【烏と狐といろいろの話 その7】
ということで
「美沙ちゃん、みーけっ。」
「ようわからんひみつ見つけたみたいに言いなーっ(言うな)。」
世間で言うところのイケメン相手に盛大な突っ込みを入れてから縁下美沙は思っていた。
人生で一番タイミングが悪いわ。
今までも謎の引き寄せ体質―周りから勝手に言われているだけだが―のおかげで散々面倒くさいことになっている。
けれども、既に烏野を筆頭に今まで関わった学校のバレーボール部が集結している中で義兄が大暴走をした丁度その時に来ることはないではないか。
そんなタイミングの悪いイケメン―ただし本人の責任ではない―の隣には硬派系の男前がいて、こちらはやっぱりお前かと言わんばかりに美沙をジロリと見つめている。
「まあ、それはそれとして」
美沙は諦め半分でため息を吐き、一旦落ち着こうと努めた。
「岩泉さん、及川さんに青城の皆さんもこんにちは。」
「ちょっとっ、なんで俺飛ばして先に岩ちゃんなのっ。」
気がついた及川が抗議するが美沙としてはそれどころではない。
「えらいすみません。既に面倒くさいことがようけ(たくさん)あったとこへ来はったから面倒が増えるんがもうわかっとって(わかっていて)。」
「俺を面倒くさい人扱いやめてっ。美沙ちゃんに言われたら泣いちゃうっ。」
やはり及川は騒ぐが、その言動が既に面倒くさいと美沙に思われていることは察しているのかいないのか。
しかも同行している女子マネ陣が清水以外、明らかに笑いを堪(こら)えている。
清水も顔に出て来ないだけで内心、美沙ちゃんが絡んだ時の及川やっぱり面白いなどと思っていたわけだが。
「毎度言ってる気がしなくもねえがな、及川。」
ここで相方の岩泉一が発言する。
「面倒くさくないつもりだったんか、おめでたいこった。」
「やっぱり俺泣いちゃうっ。」
「で、」
やかましい及川をガン無視して今度は松川一静が口を開いた。
「綺麗所にいっぱいついてきてもらって美沙さんはどうしたの。」
美沙はうっと唸った。しかしごまかせる気もしない、いつものパターンである。