第65章 【烏と狐といろいろの話　その6】

「兄さん。」
「言いたいことはわかるけど、甘えたモードは今我慢して。」
「無理ー。今日はもうしんどいー、無理ー。」
「ままコちゃんの喋りがおかしなっとるっ(おかしくなってる)。」
「ちゅうか、ツム以上に語彙が消失しとる。」
「しばくぞ、ボケサム。」
「お前らは喧嘩せんと倒れる病気なんか。あと、ままコさんも阿呆の子ごっこしとらんと(してないで)。」
「遊んでへんもん、私、切実やもーん。」
「美沙、北さんにまで甘えた喋りはやめな。赤葦君も来てるからおちょくられるよ。」
「それはアカンっ。」
「ままコちゃんが正気に戻った。」
「梟谷の赤葦くんてどないなん。」
「赤葦君もまあまあ美沙をおちょくる時あるから。」

力が事実を述べたところで、ちょっと、とふいに落ちついた声が割って入る。

「久しぶりなのに随分だな、縁下君。」

2年にして梟谷学園高校バレー部の副主将の赤葦京治がやってきていた。

「や、やあ、赤葦君。」
「お、お久しゅう。」
「いつの間に。」
「ままコさんの甘えたモード発動で君らがわいわいやってる間に。」
「ふぎゃあああっ。」
「ちなみに他の皆さんにはもう挨拶してきた。」
「早いな、流石。」
「最悪やーっ、赤葦さんには見られとなかったのにーっ。」
「ままコさんがツンデレであることを確信させる、なかなか興味深い図だったよ。」
「やっぱり最悪やーっ。」
「美沙、落ち着けって。はい、飴ちゃん。」
「さくらんぼのがいい。」
「しょうがないな。」
「いや持ってるんかいっ。」

騒ぐ美沙を当たり前のように飴でなだめる力に侑が突っ込む。