第65章 【烏と狐といろいろの話 その6】
そして
「くおらあああ、山本ーっ。」
とうとう音駒側から黒尾と孤爪、更には手白球彦が山本の回収に来た。
「ゲッ、クロさんに研磨。てかなんで球彦まで。」
「初めての現場で興味深いので同行しようかと。」
「演習かっ。」
多少落ち着いた美沙が手白に思わず突っ込んでしまった。
義兄の腕の中からでなければまだ良かったのだが、生憎力が離さないままだったので大分間抜けな絵面(えづら)である。
「あ。」
当然、美沙本人もやってもた、と気がつく。
義兄に目配せすると、察した力はパッと離してくれた。
「ご挨拶が遅れました、初めまして。烏野高校1年、パソコン部の縁下美沙です。ええと、そちらのチームの皆さんには色々お世話になってるような違うような。」
「口にパニーニ(panini)突っ込まれてえか、大食い地味リボン。」
「えー、二個以上も食べられへんし。」
「は。」
「って、そうやのうて(そうじゃなくて)。」
黒尾に口を挟まれ、ついまた突っ込んでしまった美沙は再度気を取り直す。
一連のやり取りの間、手白は動じた様子もなく美沙を見つめていた。
「音駒高校1年、手白球彦、セッターやってます。」
「どうも、ご丁寧に。よろしく。」
「話には聞いていたけど。」
「嫌な予感しかしない。」
「個性が突き抜けてるな。」
「すみません、お見苦しいところを。」
「謝ることはないけど。それと関西弁じゃなかったのか。」
「初対面の人には一応。」
「普通にしててほしい。逆に俺が混乱するから。」
「ほなお言葉に甘えて。」
「それより、失礼だけどそちらが噂のお兄さん。」
言われて美沙は先に孤爪に目をやる。
「手白君にどない伝わってるんです。」
「俺は知らない、大方はリエーフ達だからこっち見ないで、美沙さん。」
「孤爪さん、いや研磨さんも無関係とは思えんのやけど。」
美沙はブツブツ言うも孤爪はしれっと無視、義妹が孤爪にまでわあわあ言いかねないとでも思ったのか話題の義兄が間に入る。
「美沙の兄の縁下力です。妹がのっけから申し訳ない。ノリがいいのがちょいちょい行き過ぎることがあって。」
「そうみたいですね。」
ここでちょお、と美沙は口を挟む。