第64章 【烏と狐といろいろの話 その5】
「こんの、」
怒りでプルプルしながら二口は言う。横で滑津がちょっと堪(こら)えなさいって、と止めに入っているが聞いちゃいない。
「ブラコン半分ボケエエエエエエエエエエエエエっ。」
盛大な怒号が響き、
「やっかましいいいいいいいいいいいいいいいいっ。」
結局、一度月島に口喧嘩を控えろと言われたことを吹っ飛ばして美沙も怒鳴り返してしまった。
義兄がやめなさいと言っているが、こっちも聞いちゃいない。
「毎回毎回顔合わす度ええ加減にしいや、お宅様は火種投げ込まんとおれんのっ(投げ込まないといられないの)。」
「誰がオタクだお前と一緒くたにすんなっ。」
「お宅様は貴方様て意味や丁寧な言い方やのにそんなんも知らんの手持ちの板で調べたらしまいやろっ(おしまいでしょ)。」
「うるせー知るかどうせ古臭い言い方だろババアかっ。」
「二口さんがもの知らんだけやないのっ。」
「あんだとこのブラコン、特定分野極振り女に言われたかねーわっ。」
「私の特性はスマホゲーのステータスかっ。」
「うるせえ、ゲームできねえ奴が抜かすなっ。」
「誰やいらんこと二口さんに言うたんっ、ちゅうか余計なお世話や必要なツールは使えるからええもんっ。」
「黙れ洒落(しゃれ)っけねえ癖に無駄にスマホとパソコン絡みに特化してるとこが異常だわっ。」
「タブレットも使(つこ)てるもんっ。」
「何気に増やすな努力の方向音痴どこ向かってんだっ。」
「このご時世にそんくらい使えんでどないするんよっ。」
「全国の機械苦手な方敵に回してんじゃねーわ全員が全員お前レベルと思うなっつーのっ。」
「私よりハイレベルな人なんぼでもおるもんっ(いくらでもいるもん)、私デスクトップPCのメモリの取替えしかでけへんもんっ、そも二口さんかて工業系やんっ。」
「どっかしら部品取替は出来てんだろうがっ、そしてそういう問題かああああああああ。」
喧嘩の内容が混沌としている。美沙も二口もカッカし過ぎて、自分達でも何を言っているのかあまり把握していない。