第64章 【烏と狐といろいろの話　その5】

「自分、副主将やろ。そんなんでええんか。」

北が静かにこれまたもっともな事を言う。後ろで双子がうんうんと頷いているが、こいつらに同意されているようではどうしようもない。
が、さすがと言うべきか菅原は全く動じなかった。

「いいのいいの、てか北君聞いてないの、美沙ちゃんの引き寄せ体質。」
「双子からチラとは聞いてたけど、与太話(よたばなし)や思(おも)て気にしてへんかった。」
「んじゃ、これで事実ってわかったことだし、今から覚悟しといたほうがいいぞお。」
「ちょお菅原先輩、私をなんやと。」
「そもそもなんの話や、自分ほんまに副主将か。」
「大丈夫です北さん、この人普段はまともなので。ちなみに覚悟はしていただいたほうが。」
「まだなんかあるんか。」

ええ加減にしいやというニュアンスで北が呟くと

「まあ、私が言うんもなんですけど」

美沙が躊躇い(ためらい)がちに答える。

「大体この後色々来はるんで。」
「これ以上か。」
「これ以上です。」
「まま兄くん、それ動画撮ってええ。」
「ダメ。」
「なんでー。」
「侑君はうっかりSNSに上げて炎上を誘発しかねないから。」
「せーへんって、もう。心配性やなあ。」
「どうなんだか。」
「待てや。」
「おもろ、いや、おもしろ。ツムの信用なさ過ぎやん。」
「この場合は治君も一緒だからな。」
「なんでやねん。」
「DNAと育った環境が一緒だろ。」
「角名みたいなこと言いよる。」
「その角名君から聞いた。」
「あいつ、いらんこと言うて。」

治はブツブツと言うが、もしこの場に角名倫太郎がいたら事実な上に自分の苦労をわかってほしいと反論していただろう。