第47章 【王者の命】その7
言って美沙はモゾモゾし、義兄の方へ向けていた体を反転させてブランコの鎖でも握るように義兄の両腕を掴む。例によって手がヒョロヒョロなためにとても掴みきれてはいなかったけれど。
「兄さん。」
「ん。」
「もうちょっと抱っこしといてもろてええ。」
珍しく自分から出した延長申請を義兄は受理してくれた。
「いいよ。でも珍しいな。」
「そ、その、」
途端に決まり悪くなった美沙は義兄の両腕を掴んでいる手に力を込めた。
「当たり前なんやけど、その、今日は兄さんとあんま一緒におれんかったから。」
美沙としてはこれだけ言うのも必死だというのに義兄はプッと吹き出す。
「そんなに頑張って言うことないのに。だからお前はツンデレなんだよ。」
「知らん知らん。」
「こっち向いて。」
「意地悪言うたから嫌。」
美沙は抵抗したが通るはずもなかった。
まさにあっという間に義兄と唇を重ねていた。
「兄さん。」
「いくら嫌つっても俺は離すつもりがないからな。」
「もう。」
縁下兄妹が相変わらずの依存ぶりを発揮している間、コーチの烏養は美沙が作成したDVDを確認していた。
「ったく、来る度わけのわかんねー事引き起こす癖に」
必要な所がブレずに記録されている映像に烏養はしゃあねぇなぁと言いたげに笑う。
「仕事はちゃんとやるんだよな。」
夜は更けていく。
さて、最後にここは白鳥沢学園高校の視聴覚室である。
男子バレーボール部の面々が縁下美沙が撮影したDVDの映像を確認していた。
「へぇー、流石ままコちゃん。凄いじゃん。」
天童が素直に感心している一方で白布がフンと呟いている。
「薬丸、やるな。」