第46章 【王者の命】その6
「何でしょう。」
再び人見知りが発動して戸惑い気味に尋ねる美沙に彼らは何やら妙に嬉しそうである。
やがてうち1人が口を開き、美沙は一瞬ポカンとした。
「え、連絡先。」
なんと見ず知らずの他校の生徒に連絡先を聞かれてしまったのである。
「いやあの、その、何で私。」
毎回思うけどこういうんは本来、清水先輩かやっちゃんが対象になるべきやろ、いやそれはそれで問題やけどと美沙は軽く混乱状態で思う。
そういえば文化祭で化粧を施されコスプレをした時は手を握られる事があったし、一体自分はどうなってしまったのか。
対する白鳥沢の生徒は笑顔が素敵だったので仲良くなりたいと思ったと答える。
悪くない評価だがそれにしても唐突だ。
「あ、でも」
美沙が流石に直接の連絡先は勘弁してほしいと言おうとした矢先だった。
「ちょっとごめんよ。」
連絡先を請うてきた連中が固まった。
説明するまでもないが念の為言っておくと、いつの間にやら力が彼らの背後に笑顔で立っていたのだ。
「うちの妹に何か用かな。」
笑顔で放たれる圧を感じたのだろう、白鳥沢の1年達はごまかし笑いを浮かべていやちょっとお話してただけです、と呟く。
「そっか。」
笑顔も圧もそのままで力は言った。
「ならいいけど。」
白鳥沢の1年達はアワアワとして、失礼しましたと走り去ろうとした。
が、ああちょっと待ってと力は声をかける。
「良かったら妹の動画とSNSのフォローしてくれないか。美沙。」
急に義兄に促された美沙はハッとしてウエストポーチをゴソゴソする。
取り出したのはQRコードが印刷された名刺サイズの厚紙である。
「あの、私、描いてみた動画やってて、これ再生リストとSNS。動画サービスの方は最近アプリなしでも見るだけ見れるようになったんで本当気が向いたらでいいので。」
1年達はポカンとして言われるがままに美沙から差し出された紙を受け取る。
美沙はすみません、と頭を下げる。
「では失礼します。」
ポカンとしたままの相手を置いて美沙は力に少々強引に連れて行かれる。
「そら見ろ。」
一連の状況を遠巻きに見ていた寒河江が呟いていた。