第46章 【王者の命】その6
一方では五色がわあわあ言っている。
「寒河江っ、赤倉っ、でんの、いや、エンノシ、いや、ええと、とにかくそいつとは俺が先に喋ってるかんなっ。」
「そこ対抗することなのか。」
「てか呼び方安定してないし。」
「うるせっ。」
「もう美沙かままコでええよ、五色君。名字やと兄さんと区別つかんし。」
「美沙、五色君は照れてるんだよ。」
「べ、別に俺そんなことないですっ。」
「顔あけーけど。」
「日向ウルセェッ。」
「寒河江君らも、五色君に突っ込むの毎日大変ちゃう。」
「いや普段そんなに突っ込まないから。」
「俺らの立場上あんまどうこう言えないし。」
「難しい事はようわからんけど、そこは近くにおるからこそなんかな。」
「おいっ、でん、いやまま、コ、俺が突っ込まれる立場みたいに言うなっ。」
「ちゃうつもりらしいけど、お仲間としてはどない思う。」
「まぁ本音を言うと美沙さんに賛成かな。」
「バレーの腕前はともかく。」
「な。」
「寒河江も赤倉も後で覚えてろっ。あと何さらっと名前呼んでんだっ。」
「本人さんが名前で呼んでつってんのに別に深く考えるとこじゃなくね。」
「いい機会だから言わせてもらうと兄貴の立場としても普通に名前を呼んでほしいところだな。美沙と顔合わせたら喧嘩になるのは他で間に合ってるし。」
「他って誰でしたっけ。」
首を傾げる五色には日向が答える。
「伊達工の今の主将。美沙見たらすぐ半分ボケーッって言うからすぐ喧嘩になるんだよなー。」
「それってつまり。」
「いい加減意地はってないで素直にしたらいいんじゃない。」
赤倉に笑って言われてしまった五色はうがあああと頭をかきむしったところで牛島が五色、と口を挟んだ。
「電脳娘はまだ業務中のようだ。それ以上騒ぐのは良くない。」
実際そのとおりで美沙はまた自動排出されたトレイから取り出したDVDのラベルへ書き込みをしているところだった。義兄の力は側でそんな義妹の作業を見守っている。
五色ははいっと返事をしてそのまま静かになる。
「さっすが若利クン、工も一発で静かだねぇ。」
「天童、お前もだ。」
「へーい。」