第46章 【王者の命】その6
「あいつまた何も考えずに身の上話をしたんだな。」
「いや、俺らから聞いたんで。」
赤倉のフォローに力はふと笑う。
「まぁどこ行っても顔と言葉が違うってすぐ指摘されるし、俺も美沙も悪いことした訳じゃないけどな。」
「凄いっすね。」
寒河江が呟いた。
「そうかな。」
「多分俺だったらまるっきり他人だった人をいきなりきょうだいとか言われてもそんな仲良く出来ない気がします。」
寒河江の側で赤倉が俺もですと首を振っている。
「俺らも最初は全然だったよ。美沙は人見知りで敬語がなかなか抜けなかったし俺も名前で呼ぶのすらままならなかったし。」
寒河江と赤倉はへぇと目を丸くし、大体の事情を知っている日向は静かに見守っていた。
「それでも何とかなったのは美沙が人見知りのとこ頑張って俺と話そうとしてくれたのと、きっかけがあったからだな。」
「色々あったんですね。」
「向こうで妹さんが恥ずかしがってそっぽ向いてますけどいいんですか。」
「ツンデレはいつもだから。」
赤倉に対してさらりと言う力に寒河江はツンデレ、と小さく反芻する。
「ツンデレちゃうもんっ。」
聞きつけた美沙がすぐババッと振り返るが力は、はいはいと流し、美沙はぷぅと膨れる。
さっきまで決して見せなかった表情なので寒河江と赤倉は驚いて思わず美沙を見つめていた。
「もうええもんね、知らん知らん。」
ペースについてこれず戸惑う寒河江達は日向に目をやる。
「縁下さんと美沙はいつもあんなんだから。」
日向はさらりと答え、寒河江と赤倉が、お、おうと返事をしたところへドドドドという足音がした。
「ままコちゃーんっ。」
天童である。見ると天童だけでなく牛島以下他の連中もついてきていた。
寒河江と赤倉は偉大なる主将を筆頭に自分らの先輩がぞろぞろやってきたものだからビクリとし、日向もババッと後ろに飛び退(すさ)って様子を伺う。
力はというとさりげなく義妹の側に寄り添い、何かあればすぐ対応する態勢である。