第46章 【王者の命】その6
日向、寒河江、赤倉と何だかんだ話しつつ1枚目のDVDへの書き込み作業は完了したので美沙は自動で排出されたディスクを一旦ケースに入れる。
林檎印のコンピューターの画面には次のディスクを挿入するよう指示が表示されていて、美沙は用意されていた2枚目のDVD-Rをケースから出してドライブのディスクトレイにセット、慣れた手付きでカシャンとトレイを押し込む。
外付けされたドライブからはディスクが回るウィィィィンという小さな唸りが響き、コンピューター側はディスクを認識してまた書き込み作業を始める。
またしばし待ち時間だ。
「何か美沙かっけー。」
日向が呟く。
「せやろか。」
1枚目のディスクに借りたペンでタイトルなどを書きはじめながら美沙は言った。
「こんなんパソコン触ってたら普通にやる操作やろ。」
「うん、でも何かホントに慣れてますって感じ。な。」
日向は寒河江と赤倉に同意を求め、寒河江達は一応うんと頷く。
実際の所はどうやろなと美沙は思った。白鳥沢クラスの進学校なら美沙が普段家でやるような操作くらい情報か何かの授業でみっちりやっていそうなイメージがある。
ただし当然美沙の勝手な想像だから本当の事はわからないし、それをいちいち寒河江達に聞くのは野暮というものだろう。
「まぁ私は兄さんに頼まれてようディスクの書き込みやるからってのはある。」
ディスクのラベルにタイトルと日付を書き終わり、その薄いプラスティックケースをそっと閉めながら美沙は言った。
「お兄さんに。」
寒河江に聞かれて美沙はうん、と頷く。
「兄さんよう実写で仲間巻き込んで自主映画作るから。ただ最近わからんのは私に時たまその映像のディスク作るの手伝え言うたり、撮影にも巻き込んでくる時がある。」
「カメラ回すの手伝ってる時もあったよな。」
ぼそっと呟く日向、頷く美沙、実を言うと本当にそういう事があった。
「赤葦さんにしてもらう予定が、都合つかんくなってほな私って流れになった。」
「へー、その時も代役したのか。カメラの扱い慣れてる訳だな。」
赤倉は感心してくれるが美沙はその時のことを思い出すと今でも冷や汗が出る。