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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第44章 【王者の命】その4


「美沙ーっ。」

義兄の力も飛び上がらんばかりに驚いた。澤村以下烏野の他のメンバーもほぼ全員がヒィィィと怯え、月島ですら顔が引きつっていた。
白鳥沢の方も牛島は泰然としていたが選手の多くは事態を把握できず呆然とし、コート外の部員達も固まっている。

「あんの馬鹿っ。」

烏養がこめかみに青筋を立て、武田も大変だっと動揺、力も驚いたままではなく行動した。

「すみません、回収してきますっ。」

鷲匠が馬鹿にするな小娘と激怒する気しかしない、烏養・武田よりも先に力はすっ飛んでいく。
その間にも義妹に向かって怒号が飛んでくるかと思ったが意外にも静かで力は思わずキュキュッと足を止めた。

鷲匠は振り返って義妹をじーっと見ていた。
当の義妹はきょとんとしているが鷲匠の背中をさする手は止めない。

「何のつもりだ。」
「すみません、えらい苦しそうに見えましたんでつい。」
「気遣いはいい。まだ小娘に心配される程耄碌(もうろく)しちゃいねぇ。」
「それはその、大変失礼しました。」
「怒っちゃいねぇよ。」

それより、と鷲匠は撮影機材に向かって顎をくいっとやる。

「とっとと持ち場に戻れ。何の為にわざわざお前を呼んだと思ってる。」
「はい。すみません。」

テンションを落として義妹は機材の方に戻り、力と烏養と武田が入れ替わりで鷲匠の所へいく。
当然まずは、申し訳ありません、である。

「いい。」

椅子に座って腕を組む鷲匠は静かに言った。横にいる斉藤がちらっと見て意外そうな顔をしている。今日は彼にとって人生で一番こういうパターンが多い日ではないだろうか。

「お互い時間がねぇ。続けるぞ。」
「本当に何度も申し訳ありません。」

烏養、武田、力は頭を下げて自チームに戻ろうとする。
だが力は去り際に聞いてしまった。

「ったく小娘が、気恥ずかしくてかなわんわ。」

こそっと見るとその一瞬だけ鷲匠の顔が赤かった気がする。
力は心の中でうちのがマジですみませんと思った。
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