第44章 【王者の命】その4

そんなこんなで休憩時間は終わり、電脳娘こと縁下美沙は再びカメラを手にする。
当人は気づいていないが鷲匠はこの烏野から来た小娘がカメラを手にした途端に目つきが変わった事に気がついていて、こいつは違う分野で曲者だなと思っていたという。


そして試合は再開される。
やはり猛スピードでの展開、恐らく白鳥沢側の方は100%の力を出しているという訳でもないだろうに烏野側はバシバシと抜かれたり防がれたりする。
それでも、そんな中でも奮闘はしていた。
西谷がギリギリのラインで踏み切って飛んでトスを上げていた。月島はガツンとブロック出来ないまでもワンタッチが多く、ただでは通さないつもりが美沙でも見て取れる。
気づけばダダッと勢いよく日向が走り出す。
来る、と美沙は思ってカメラを向ける。前に東京は音駒高校との練習試合でも見たあれだ。

やはり、影山がピンポイントでトスを上げて日向が何とか見つけたらしき白鳥沢のブロックの隙間にボールを叩き込む。
来た、変人速攻と烏野側のベンチから声が上がった。義兄の力がナイスプレーと叫んでいるのも聞こえる。

うちも負けてへんなと美沙は内心思って微かに笑みを浮かべる。
と思っていたら白布がさりげなくまたトスを上げていて、瞬間また牛島が飛んだ。
ああ、綺麗やなと美沙は思う。
味方チームのエース、東峰を馬鹿にする意図はない。ただ純粋にバレーボールをやっている牛島には目が釘付けになる。これがカリスマというものなのか。
それでも忘れずにカメラを操作しているうちにバアンとボールが床に跳ね返る音が響いた。
しまいめに床に穴が開くんちゃうかと美沙が思っているうちにボールがまた烏野側と白鳥沢側を行ったり来たりする。
一瞬澤村が打つように見せかけて田中が攻撃に飛ぶもやはり天童が悟ったように腕を伸ばして防ぐ。

「さっすが俺っ。」

1人ノリノリな天童、斉藤がうんうんと頷いていて鷲匠は意外にもやかましいとは言わないのが目の端に映った。
更には五色が飛んでストレートのスパイク、美沙でもわかるキレの良さ、本番の試合でもないのに圧倒的すぎる。
今の見ましたかっと彼が牛島に振るも当の牛島がスルーしているのには笑いそうになった。
あえての演出でない限り撮影担当の声など雑音になるのはわかっているから我慢したが。