第38章 【トラブルドゥトラベリング】その4

「ほなままコちゃん次俺俺。」
「詐欺の一種。」
「オレオレちゃうわっ、ちゅうかその表現今日日古いやろっ。」
「フルーツ」
「は。」

美沙のボケについていけなかった侑は首を傾げ、そこへ月島が呆れたように口を挟む。

「それはオ・レ、縁下さんいないとこにわかってて突然ボケるのやめてくれない。」

途端に宮侑は吹き出して美沙をちらっと見た。

「自分いっつも駄洒落ばっかし言うてんの。」
「言うてへんもん。」
「駄洒落まで行かないけど突っ込んだつもりのがほぼボケ混じりですね。」
「ちょおっ。」
「あー、なるほど。そういやさっき豚についてえらいツラツラと」
「ですからこの人通称半分ボケ。」
「月島やからしゃあないとはいえ失礼やなそれに通称ちゃうしっ。」
「僕だからって意味がわかんないんですケド。実際認識されてるでしょ、青城の岩泉さんとあと伊達工の主将はもろ半分ボケ呼ばわりだしそもそもお兄さんに言われてるし。」
「半分ボケなぁ、うまい事言うたな。」
「山口相手以外は人の神経逆撫でがデフォやん、それと侑さんは納得せんのっ(納得しないで)。」
「せやけどままコちゃん、説得力ありまくりやで。」

面白がってヘラヘラ笑う侑に美沙はムゥと頬を膨らませてプイッとした。
烏野勢があ、と次起こることを察した雰囲気を醸し出す。

「そんなん言うんやったらもう写真撮らへんもん。」
「スンマセンしたっ。」

本来あってはいけないであろう光景が展開された。
あの宮侑が地味でオタクな自称その辺にいるただの動画投稿者―只今は町娘に扮装中―に頭を下げていた。
通りすがり―特に女性陣が―何事かと注目しているがこの時縁下美沙本人はそれどころでなかったので気にしていなかったという。

「宮さんが、」

ずっと硬直して黙ったままだった影山がボソリといった。
逆転してあまりのことに硬直が解けたらしい。