第36章 【トラブルドゥトラベリング】その2
「まぁままコさんはそのくらいわかってるだろうけど。」
「せやから月島語は難解や言うんよ。」
「いい加減その謎の言語体系やめて。」
そうやって彼らはそんな会話をして東京へ行くよりずっと遠い道のりを過ごしたのだった。
そうして一旦現地について宿泊先に入り、谷地以下男子排球部の1年生達は縁下力の言いつけどおりに他の男子が美沙に近づいたりしないよう気を配りながら一晩を過ごす。
で、夜が明けていよいよ修学旅行本番である。
ご多分に漏れず烏野の生徒達はあちこちの名所を周り、縁下美沙は結局男子排球部の1年勢と一緒に自由時間を行動していた。
「出不精ままコさんが生き生きしてるんだけど。」
月島がブツブツ言っている。
行く先々で美沙が日向と一緒になって少々騒いでいた為疲れ気味らしい。
ちなみに只今彼らは映画村へ向かう途中だ。
「おんなじ関西弁のとこ来たから嬉しいんじゃないの。」
「どう考えても京都弁とままコさんの喋ってんのは違うデショ。ま、日向が知ってるとは思えないけど。」
「何でいちいち一言多いんだよっ。」
「関西弁って1個じゃねぇのか。」
「ここにも馬鹿がいるの忘れてた。」
「他所の言葉なんざ聞き分けがつくかっ。」
「影山君、駄目だよ美沙さんに失礼だよ。」
「因みに美沙さんのはどこらへんなの。」
「ばあちゃんが瀬戸内海あたりの人やから京都や奈良やないのは間違いないけど正直わからん。」
「へぇ。」
そんな話をしながら歩いている時に事は起きた。
「飛雄くん。」
疑問形で影山にかけられた聞き覚えのある声に美沙は全身から血の気が引いた。振り向きたくない、更に言えば向こうに気づかれたくない。
見れば月島は嫌な顔をし、谷地と山口は出たーっとまるでお化けでも見たかのような反応、日向はおおおおおと感激している。
何故か道の向こうに有名人宮侑とその双子の兄弟である治以下、兵庫県は稲荷崎高校のバレーボール部の面々がいた。
「宮さんっ。」
影山は驚きはしたものの他に何も考えていない様子で応対している。