第33章 【強引g his way】その4
及川徹がうっうっと泣いている。
「美沙ちゃーん、またねえええ。」
「はい、またオンラインで。」
「動画も楽しみにしてるからさー。」
「それはおおきに。」
「ただし美沙の手を握らないでください。」
「縁下君心が狭いんじゃないの、いーじゃんこっちは知らない仲じゃないんだし抱っこはしてないんだしさ。」
「いえ、そうではなく。」
「あんたねぇ、有名人だかモテ男だか知らないけど性懲りもなく付き合ってもないのに美沙にベトベト引っ付くんじゃないってぇの。」
「いててててっ耳引っ張らないでくださいっ。岩ちゃん助けてワイルド系お姉さんに〆(しめ)られるっ。」
「そんまま〆てもらって結構っス。」
「岩ちゃんちょっとっ。」
「俺がやるか他にお願いするかの違いだけだ。良かったじゃねぇか半分ボケ以外の女子にも相手してもらって。」
「〆られるのは話が違うからっ。」
「とにかく美沙から手を離しな、な。」
「はいぃぃぃぃっ。」
冴子に凄まれた及川はビビって握っていた美沙の手を放した。
困ったことにこの男、そろそろチームメイトと一緒にこの場を去らねばならない時間だというのに未練がましく美沙の手を握って粘っていたのである。
「え、えーと、」
決まり悪そうに何とか笑顔を作って及川は言う。
「本当にお騒がせしました、それでは失礼しまーす。」
及川に続いて青葉城西の他の連中も一斉に挨拶をする。
烏養がお、おうと若干タジタジしながら対応する中で連中はゾロゾロと去っていったのであった。
「ったく、いつもあいつが来たらああなる訳。美沙も力も大変だねぇ。」
冴子が青葉城西の連中の姿を見送りながら呟いた。
「まったくです。」
「何でこないなったんだか。」
「お前が親切すぎるからだよ。」
「だからってお前が異常なシスコン発揮していいって事でもないからな。」