第30章 【強引g his way】その1
とある大きな体育館施設での事である。
宮城県立烏野高校男子排球部の面々は後学の為にとバレーボールの試合を見に来ていた。
今回は付き添い付きでコーチの烏養繋心他、排球部のOBにして町内会バレーボールチームの嶋田誠、滝ノ上祐輔、それと2年田中龍之介の姉である冴子がいる。
更に
「えらいとこまで来てもた。」
2年縁下力の義妹、縁下美沙は祖母譲りでどうしても直らない関西弁で呟いた。当然の事ではある。縁下美沙は確かに烏野の生徒であるし力の妹―実際の関係はそれ以上である事は置いておいて―であるが所属しているのはパソコン部、まったくもって排球部には関係がない。
加えて男子排球部には既に3年清水潔子と1年であり美沙のクラスメイト谷地仁花のしっかりものマネージャー達もいる訳で今回美沙が男子排球部についてくる必要性はどこにも見当たらない。それなのに
「何で私はここにおるんやろか。」
美沙は疑問をそのまま口にする。ただでさえ場違い感が半端ではなく美沙はひどい人見知りでもある。冴子はいい、いつだったか義兄に連れられて田中の家に上がった時に会っているしその後も何度か会って良くしてもらっている。
一方1年山口忠のサーブの師匠である嶋田や公式試合ではしょっちゅう応援に来ていると聞く滝ノ上という初対面の大人が2人がいるという状況はかなりきつい。耐えかねてうううと小さく唸る美沙はペシッと背中を控えめに叩かれた。
「外で変な声出さない。」
義兄の力である。
「そもそも兄さんのせぇやで。」
敬愛する義兄と言えどあまりな状況に美沙は恨みがましく彼を見る。
「何のこと。許可は取ったし。」
あろうことか義兄はとぼけた。