第29章 【コックローチアタック】
「とにかく」
普段よりやや大きな声で力は言い、ぐるんと部室を見回した。
改めて見てみると部室は大変に汚れている。菓子の食べかす、空になった袋が隅っこに落ちているし誰かがこぼしたらしき飲み物の微妙に粘り気が残っている痕、細かい埃も舞っている。おそらく田中か西谷と思われるが汚れたままのシャツや誰のかわからない汚れた靴下が片方放置されているときた。
澤村を頭に頂き谷地や清水が奮闘しているにも関わらず何故にこうなるのか。
「こんな様(ざま)じゃそりゃGだって出ます。他の部にも迷惑かかりますしこれからはGが出ないように部室の掃除を徹底的にしましょう。」
にっこり笑ってのたまう力に1年生陣は月島以外ガクガクブルブル、事の発端となってしまった美沙は自分が汚した訳でもないのにつられて身震い、2年生陣は田中と西谷が何かを予感したのか菩薩顔で木下と成田はうわあと苦笑し、3年生陣は澤村が笑顔を浮かべつつも額に汗、菅原は美沙ちゃんパワーが半端じゃねぇと感心して東峰はいや違うだろと焦る始末で清水は黙って状況を見つめていたのだった。
この事件ののち烏野高校男子排球部の部室では2年縁下力が清掃関係のみ物凄い権力を振るう事になる。
「旭さんその食べ残しはちゃんと片付けお願いします、田中西谷着替えた服はちゃんと持って帰れ、日向また靴下落としてる、影山爪を切るのはいいけど飛んだ爪は残さず回収しろよ、木下後で落とした食べかすは箒で掃いとけ、ああ月島そこのロッカー上の埃拭いて、山口燃えるゴミの箱そろそろヤバイから中身袋に移しといてくれないか、成田空ペットボトル入れに飲み残しあるやつないか見といて後始末が面倒だから、あ菅原さんそこの文房具類この箱に入れ替えてください箱が汚すぎる、丁度いいとこに大地さん谷地さんと清水先輩が仕分けしてくれた不用品念の為最終チェックお願いします、ところで誰だ部室にガチャガチャで引いたスライム持ち込んだの。」
後輩、同輩、先輩構わずの徹底ぶりに部員達は清掃が大事なのは理解するがやれやれとなりこの話を親友の谷地以下1年生陣から聞いた縁下美沙はめっちゃ恥ずかしいと頭を抱えたという。
【コックローチアタック】終わり