第25章 【パニック at the 文化祭 後編 その1】
そんな事を言っている間に美沙は強引に及川と写真を撮られてやっと開放された。
「はい、美沙ちゃん終わったよ。ありがとねー。」
子供に注射を終えた医者のように言う及川、兄さーんと半べそで義兄のもとに駆け寄る美沙、力は渡の言っていたとおり笑顔ではあるがブチギレ寸前で後もう少し何かあれば及川に突撃をかますところだったがそれは一旦回避された形である。
「はあああ」
二口がここでわざとらしくため息をついた。
「ほんっと理解できねえわー、何でそんなにこの半分ボケにご執心なんですかねぇ。」
「ちょっと二口君、随分失礼じゃない。」
「そう仰いますがね、べっつにこいつ美人でもなんでもねぇしポヤンポヤンだし発想意味不明だしブラコンだし俺にとっては理解不能ッスわ。」
それまで我慢していた縁下美沙、コスプレ喫茶の会場から離れた今とうとう限界が来た。ぐるんと高速で二口の方を振り返りその義兄がよくやるように無表情でフリフリエプロンのポケットを探りながらずんずんと近づく美沙、義妹について好き放題言われた事の方を重く受け止めた力は笑顔のまま止めようとしない。そのまま美沙は例によって二口をハンカチ―それも今回の出し物用に用意されたこれまたフリフリのもの―でひっぱたこうとしたその時である。
「あっ主将危ないっ。」
黄金川が叫び、その場にいた烏野勢はあっと動揺、伊達工もあいつまたやったっとなり青城がうおっとざわめいた。
縁下美沙はいつかのように黄金川に持ち上げられていたのである。
「黄金川君、君なぁ。これで2回目やで。」
またかと諦め気味のため息をついて美沙は言った。