第25章 【パニック at the 文化祭 後編 その1】
「おいそこのロリ服、お前まさか半分ボケか。」
どこかで聞いたことのある少々捻くれた物言いの約1名、そのすぐ横の無口を具現化したようなでっかい姿、そして2つ目のややこしい事が起きる。
「うわぁ、今度は伊達工かよ。」
成田が呟いた。コスプレ喫茶の外で相変わらず美沙の義兄、力に付き合って中を覗いていたのだ。両手は力の両肩を掴んでいて今にも義妹の所へ突撃しそうなこの兄を押さえていた。
「すげーな流石美沙さん、次何引き寄せるんだ。」
木下は感心せんでもいいところで感心している。
「やめろフラグ立てるな、これ以上何か引き寄せられてたまるか。」
成田に掴まれたままの力は憮然とした顔で言い、たまたまやってきたという影山は今も青ざめた顔でダラダラと汗を流している。それをちらりと見た力はやっぱり何かおかしいなと思いつつそっちは後で聞こうと思う。
今はまず義妹の方が重要だ。美沙は伊達工男子バレーボール部の主将である二口と顔を合わせる度に若干揉める。日頃から口が悪い二口はどうにも美沙を見ると何か言わねば気が済まないらしく美沙は美沙でそれに堪(こら)えきれず言い返してしまうのだ。
一方の美沙は及川にちょっかいをかけられたばかりの所に別の意味でややこしいのが来てまたもパニック寸前だった。
何で及川さんらがおるタイミングでこの人なんよと思うが今そんな事で騒ぐ訳にも行かず二口堅治の台詞は聞こえなかったふりをする。
「2名様でよろしいですか。」
「ああ。」
横の青根高伸が低く呟く。
「おい、半分ボケ。」
「2名様ご案内でーす。」
「元気そうだな。」
「おかげ様で。」
「おい。」
青根にだけまともに答える美沙に対して二口が唸っているが聞こえないふりである。そうして美沙は開いているテーブルに2人を案内したのだがすぐにしもた(しまった)と思った。しかしこの時点で他に空いている所はなくどうしようもない。
「あっ美沙ちゃーん、また来てくれたのー。」
「ちょ、この人は、シーッ。」
「このボゲっ、我慢てもんがねーのかっ。」
「あーっ。」
二口が叫んだ。