第25章 【パニック at the 文化祭 後編 その1】
知らない所で外部からの襲来があるとは全く予想せず縁下美沙はロリータ服で接客に励んでいる。
「いらっしゃいませー。」
「3名様ご案内でーす。」
「お待たせいたしました、ショートケーキとオレンジジュースです。ごゆっくりどうぞー。」
「ありがとうございましたー。」
ビビリの人見知りにしては本当によくやっている。その一方、
「どうしよう、あれ。」
山口がボソリと呟いた。視線の先にはまあまあ混んでいるのに今も居座っている―おまけに木下も成田も巻き込んでいる―美沙の義兄、縁下力の姿がある。
「居座っちゃってるね。」
苦笑するのは谷地だ。
「どうしようも何も」
月島が静かに言う。
「そろそろ出てくださいって言うしかないデショ。てかそもそも何で成田さんも木下さんも黙ってんの、一緒にいるのに。」
「私思うんだけど言っても縁下さんが聞いてくれないんじゃないかなぁ。」
「待って2人共、成田さんと木下さんがアイコンタクトしてる。」
確かに3人が見ていると成田と木下がお互い目配せをしてから何やら力に耳打ちをしている。ほんのしばらくして力がうっと言いたそうな顔をして渋々といった様子で成田達と一緒に席を立った。コスプレ接客役の誰かがありがとうございましたーと挨拶をしている。
「うわぁ凄く嫌そう。」
今度は山口が苦笑した。
「あ、美沙さんに何か言ってる。」
「うわ見てツッキー、美沙さんが知らんぷりした。」
「他校も来てる前でくれぐれも萌ポイントを晒すななんて言われたら流石のブラコンもドン引きするでしょ。」
月島が言った所で縁下力は成田と木下に押されながら教室を出ていったのであった。