第23章 【パニック at the文化祭】前編
先に言っておこう。それはもうどえらい事態だった。
よくもまあ飽きもせずこんだけ起こるもんである。
烏野高校は文化祭を控えていた。あちらこちらのクラスで出し物についてああでもないこうでもないと意見が交わされクラスによっては大騒ぎになって文化委員が頑張って押しとどめていたりしている。
そんな中で男子排球部縁下力の義妹である美沙所属の1年5組は隣の1年4組と合同で出し物をする事になった。
それも
「コスプレ喫茶と来たか。」
亡くなった祖母譲りである関西弁の抑揚で縁下美沙はボショリと呟く。
「意外だねぇ。」
親友にして義兄のいる男子排球部のマネージャーを務める谷地仁花が苦笑した。
「そういうのやりたがる人あんまりいないと思ってた。」
「私も。」
出し物が決まってわいわいとざわめく教室、ちょっと騒ぎがでかくなり始めた為文化委員が静かにと大きく声を上げる。これから実際にコスプレして接客する者をくじ引きで決めるという流れだ。人見知りの美沙は正直当たりとないなと思う。しかし4組と5組合同、まぁまぁまとまった人数全員がくじを引くのだからそうそう当たるまい、当たっても誰かが―特に4組がいるなら義兄、谷地と同じ排球部の月島あたりが―縁下美沙はまずいと止めに入る可能性だってある。そう思いながら美沙は谷地と一緒に順番を待ってくじを引いた。
「当たっちゃってたらどうしよう。」
とりあえず引いたくじをもって席に戻りながら谷地が言った。ガクガクブルブルしているその背中を美沙はなでなでしてやる。
「大丈夫やて、仮に当たったってやっちゃんは可愛い系やねんから誰も文句言わへんって。」
「だだだだってこんな貧相がコスプレしてしかも接客失敗しちゃったらああああ。」
「いやいややっちゃん落ち着きって、ほら息しぃ。」
そんな2人を4組であり男子排球部の月島蛍と山口忠が見ていて、月島は呆れたような顔、山口はアハハと苦笑している。文化委員がそれでは引いたくじを開いてくださいと声をかけた。皆がカサカサと紙を開く音が響き、程なくやったコスプレの方当たった俺外れた良かったコスプレしなくて済むなどという声が上がる。