第22章 【大人になってもご用心】
「美沙。」
「何。」
「とりあえずお前がめっちゃお酒弱いのはわかったから」
「うん。」
「これから俺の時だけお酒を飲め。」
義妹はもう酔いは覚めきっているはずだろうにふにゃっとした笑顔であい、と返事をした。
「とまぁこんな感じかな。」
今すっかり歳をとった成田が話を結ぶ。木下、田中、西谷が懐かしそうにする中話を聞いていた縁下ジュニアはそんな事があったんかと呆れてため息をついた。
「せやけどそれやったら何でおとんはそもそも酒飲むなって言わんかったんやろ。」
首を傾げる少年に木下が笑う。
「たぶん普段と違う美沙さんを相当可愛いって思ったから飲むなら自分と一緒の時だけって言ったんじゃねえの。」
少年はブフッと吹いた。
「おとんもおかんもほんま高校時代何やっとってん(何やってたんだ)、恥(は)ずいわぁ。」
うんざり顔で呟く少年だったが突然背中に悪寒を感じて腰を浮かせる。気づけばおっさん連中もさっきまで酔って赤くなっていた顔が青ざめていた。そのままおっさん4人と少年1人はそおっとドアの方に顔を向ける。
果たしてそこには少年の両親が立っていた。
父の方は顔は笑っているが目が笑っていない。母の方はまるで高校時代に戻ったかのように顔を赤くしてあうあうとしている。おっさん4人と少年が戦慄する中少年の父はスーッと部屋に入ってくる。
「とりあえずお前らそこに正座しろ。」
笑顔から繰り出される威圧感は今も変わりがない。ほとんど本能的に田中、西谷、木下、成田は正座し逃げる訳にも行かなかった少年もそれに習う。
「あれだけ言ったのに人が留守の隙に子供に何話してるんだ。」
父のお説教が始まった。おっさん4人は縮こまっている。母はなおも顔を赤くしながらコソコソと台所に入っていく。
少年はもしかして高校の時もこんなんやったんやろかとお説教を食らうチームメイトの父親達の様子を横目で見つつもおじさんらホンマごめんと心の中で合掌したのであった。
【大人になってもご用心】終わり