第22章 【大人になってもご用心】
「おいどうした、ままコが自分から及川に抱きついたぞっ。」
「いつもセクハラされるから仕返しじゃねえの。」
「いえ松川さん、あれじゃ逆に及川さんは喜ぶと思います。」
「渡の言う通りっすよ、あーあ及川さん完全に顔が緩んでるし。」
「ままコ、悪いもんでも食ったのか。」
「さっきチョコがどうのって烏野側は騒いでましたが。」
「及川さんが変な薬でも混ぜたんじゃないのか。」
「国見やめろって。」
青葉城西側が口々に言う中、及川は矢巾の言うように顔が思い切り緩んでいた。
「何々ついに及川さんの事が好きになったの。」
嬉々として言い抱きついてきた美沙を抱きしめ返す。
「んなことあってたまるかこのヤロとっとと離せこのボゲがっ。つーかてめーも何自ら飛び込んでやがる早く離れろこの半分ボケっ。」
岩泉がカンカンであるがこれまた効果がない。あろう事か酔っぱらい美沙は及川の服にスリスリをしだして及川は昇天せんばかりに幸せをかみしめている。
「何これ俺幸せ過ぎて死にそう。」
「いっぺん死ね糞ったれ。」
こめかみの辺りを痙攣させながら言う岩泉、呼応するように烏野側から田中と西谷がそーだそーだっと声を上げた。
「おい優男っ縁下妹勝手に愛でてんじゃねえっ。」
「そーだっ、美沙は力の嫁って決まってんだぞっ。」
フォローしたいのか騒ぎの火に油を注ぎたいのか。澤村がああもうと片手を額にやって天井を仰ぎ、東峰が西谷ああああっと動揺、菅原は半分驚き半分笑ったみたいな顔で何故か片手にはスマホ、清水がそのスマホの画面に手をかざしてさりげなく撮影を阻止している。勿論美沙の義兄はこんな混沌状態を黙って見ている奴ではない。
「美沙何してるんだ早く離しなさいっ。」
「えー、縁下君もう来たの。いいじゃんもうちょっとくらい。いい子だねえ美沙ちゃん。」
「冗談じゃありませんこれ以上貴方に触らせてたまりますか。」
「何それひどいっ。」
「ほら美沙。」
しばらく義兄の言うことも無視していた美沙はやっと反応した。しかしまた頬をプクッと膨らませている。
「いや。」
おまけに拒否した。力は軽くショックを受けた。後ろでは谷地と山口と日向が飛び上がり、月島の目が点になり、影山ですらヒクヒクしている。