第22章 【大人になってもご用心】
「うえーい、今度はべっぴんさんつかまえたぁ。」
「美沙ちゃん。」
流石の清水も困惑した声を上げる。
「すりすりしたるもんねぇ、えへへへー。」
なかなかの光景であった。田中と西谷が縁下妹よくやったなどと訳の分からない事を抜かす始末である。
「清水先輩、ええにおいするぅ。」
「美沙ちゃん、落ち着いて。」
これ以上進むと青少年お断りな光景に発展しかねない、かもしれない。危機を感じたのか菅原がうおおいっと叫んだ。
「縁下何とかしろっ、美沙ちゃんガチでおかしーぞっ。」
呼ばれた力も事態には気づいていて大慌てでやってきていた。しみずせんぱいだいすきーとか何とか舌っ足らずの喋りで言っている義妹を叱りつける。
「こらっ、美沙っ。」
すると義妹は美沙はへへへーと笑って清水から離れ、力のもとへやってくる。悪びれた様子がない。本当におかしい。普段ならこの時点で絶対にふぎゃああと叫んで飛び上がりすみませんすみませんと清水に謝りまくっているところだ。
「お前、本当にどうしたんだ。」
「何だかお酒に酔っちゃった人みたいです。」
谷地の一言に美沙から開放された清水がハッとした顔をした。
「美沙ちゃんさっき何食べてた。」
「確かその辺にチョコレートケーキがあってそれ食べてました。」
「チョコレートケーキ。」
力が谷地の言葉を反芻してまだ残っていたその問題のチョコレートケーキを取り上げてじっと見つめスンと香りを嗅ぐ。
「ああ。」
途端に力はがっくりとなってため息をついた。
「どうした縁下。」
菅原に尋ねられて力は力なく答えた。
「間違いありません、美沙の奴これで酔っ払ってる。」
烏野の連中はえええと騒いだ。
「美沙ちゃん酒弱っ。」
「いやスガ、そういう問題じゃないんじゃあ。」
「誰だっ、酒入りの菓子混ぜた馬鹿はっ。」
まるっきり父親のようなノリで怒る澤村、あわわとなって震える東峰、しかし事態はそれで収まらない。