第18章 【初めてのアルバイト】前編
「美沙ちゃんは慣れるまで時間かかるから気持ちはわかるけどな。」
「そもそも親御さんはどうなんだ。」
はははとこれまた苦笑する東峰旭に加えてとうとう澤村大地までもが話に参加した。
「先にオッケー出してます。ただ美沙には俺がいいって言うまで相手に返事するなって言いつけてあります。」
そこまでするかとこの時男子排球部の面々は思ったというが力は何となく空気を察しつつも気づかない振りをする。だがしかし黙っちゃいない奴らがいた。
「心配性。」
「過保護ー。」
「独占欲。」
「シスコーン。」
「溺愛。」
「末長く爆ぜろー。」
「社会勉強させてやれ。」
「お前ら何だよっ。」
ここぞとばかりに交互に好き放題言いだす成田と木下に力は叫ぶが
「縁下、」
とうとう3年マネージャーの清水潔子が言った。
「美沙ちゃんも社会を知らないと。」
力は沈黙した。
とはいえ力としては心配の方が先に立つ。基本外に出ない人見知りでビビりの義妹だからなのは勿論だが月島に挙げられたカオスの中にもあるように義妹はしばしばよくわからないところでよくわからない野郎に気に入られる事がある。ただでさえあの及川に追っかけられているのにこれ以上変な虫によってこられてはたまったものではないというのが力の思うところだ。
そうして力はこの日の夜スマホを手にして音声通話をかけていた。
「過保護だな。」
音声通話に出た東京の梟谷学園高校、赤葦京治は即刻斬り捨てた。
「速攻かよ。」
「事実だからね。その様子だと烏野のみんなにも散々言われたんじゃない。」
「成田と木下がいっとう酷かったな、独占欲だの溺愛だの。」
「日頃のストレス発散じゃないか、ままコさんが絡むと暴走する君を止めるのは骨が折れるだろ。それも毎日じゃあね。」
「赤葦君、君もか。」
「とにかく程々に。まさかずっとままコさんを世間知らずのうp主にするわけにもいかないだろ。てか今日日のうp主はもっとアクティブだし。」
「赤葦君、どこでそんなの覚えたんだ。」
「ままコさんのお陰で色々見てるから。とにかくバイトは許したげるべきだな、親御さんがいいってんなら尚更。」
チームには散々言われ、遠方の他校にまで言われて力はうーんと唸った。