第16章 【どうしてこうなった】中編
まさかの縁下美沙の登場は勿論周囲の動揺を誘った。
「美沙っ。」
いっとう最初に飛び上がったのは勿論義兄の力である。
「ななな何やってるんだっ。」
「ご、ごめん兄さん、その」
息を切らしている美沙が喋っているのは聞いてて少し辛い。
「忘れ、もんしてたから、持ってきた。」
言って美沙は鞄をゴソゴソして力のサポーターを取り出す。
「それでわざわざ」
しんどそうに体を曲げて片手を膝に置いた姿で差し出されるサポーターを受け取りながら力は呟いた。時折思わぬ行動に出る義妹であるがまさか青葉城西まで走ってくるとは思わない。
「そんなになってまで悪かったな、ありがとう。」
「ほな私そろそろ行くから。」
「あ、ああ。」
他に言うことを思いつけず力がそれだけ言っている間に後ろはひどくざわついている。
「ほらやっぱり美沙来たっ。」
「何で嬉しそうなの日向、おかしいから。」
「走ってきたのかな、めっちゃしんどそう。」
「わ、私だったら息切らしてきっと命の危機に」
「ままコってすげーのかボケなのかよくわかんねーよな。」
「王様に言われたらままコさんもおしまいだね。」
「んだとコラ。」
「ツッキー、よしなって。」
「流石縁下、立てたフラグはきっちり回収しおる。」
「お、美沙あれ着てんじゃねーかわかってんなっ。」
「成田、これどーなるんだ。」
「俺にわかるかよ。とりあえず青城もめっちゃ美沙さん見てる、どうにも嫌な予感しかしない。」
「やー流石ブラコン美沙ちゃん、縁下のシスコンに隠れてわかりづれえけど。」
「スガ、言い過ぎだって。」
「兄貴思いだなあ。」
「澤村、目が遠くなってる。」
勿論青葉城西側がこの事態に反応しないわけがない。
「美沙ちゃんがきたっ。」
早速及川がすっ飛んで行こうとして岩泉にどつかれた。