第49章 ・TVゲーム その1
という訳でとある休日、何と牛島家に男子バレー部の野郎共が来ていた。なかなか見れない光景かもしれない。
「若利君、これ繋いで。」
「どこにだ。」
「兄様、TVの横か後ろにHDMIと書いてある接続端子がありませんか。」
「あった。」
「それです。」
「わかった。」
「文緒、よく知ってたな。」
瀬見が意外といった調子で言う。
「文芸部の先輩にこういうのに強い方がいて教えてもらいました。」
「そいつもゲームすんのか。」
「いえ、スマホとパソコンを繋いで映像を取り込んでるとか。」
「文芸部とは一体。」
「特技は一つとは限りません。」
「上手いこと言うのな。」
「若利君、電源どっから取ったらいい。」
「そこが使える。」
「サンキュー。」
「私お茶淹れてきます。」
「ああ、頼む。」
「流石嫁ですね。」
「まだ嫁じゃない。」
「太一、ややこしい事言うなよ。」
「だってあれモロじゃん。」
「そうだけどさ。」
「いやそれより誰か若利にも突っ込んでね、頼むから。」
大平が頭を抱えるのはもはや定番になったと言えよう。
「どのみち牛島さんは聞かないと思います。」
「工に言われちゃもうどうしようもないな。」
山形が呟き、とうとう勝負の時は来た。
「があああっ、誰だ今大量に連鎖しやがったのっ。」
「ごめんねー、英太君。」
「てめーか天童っ。」
「つか5人対戦なんだから残り4人のとこは全部妨害食らうでしょ。」
「白布、冷静だな。」
「山形さん、余所見してる場合ですか。」
「先輩方、すんませんっ。」
「うおっ、工てめっ。」
くじ引きの結果の組み合わせ、まあ当然と言うべきかやかましかった。普段比較的静かな牛島の家に野郎共の声が響く。しかしそれだけではない。
「あの、兄様。」
「もう少し大人しくしろ。」
「いえ、おろしてくださいな。」
「何故だ。」
「人前です。」
「気にすることか。」
「寧ろ気にしてください大平さん助けてください川西さんは笑わないでください。」
「若利、お前いつもそんな事してるのか。」
「ああ。」
「普通に答えないで頼むから。」
「おい後ろどーした、あっそこの馬鹿やろは何やってんだよっ。」
振り向きざま瀬見に指摘された若利は動揺する事なくああと淡白に呟く。