第1章 ・事の始まり
白鳥沢学園高校男子バレーボール部主将であり、世界ユースに入っている高校バレーボール界の有名人である牛島若利にまさかの事態が起きた。
「今何て言った。」
学食にて、同じチームの大平獅音が冷や汗を垂らして聞いてきた。
「義理の妹が出来た。」
若利はさらりと言ったが一緒にいた仲間達は激しく動揺する。
「お前それさらりと言うことかっ。」
瀬見英太が叫ぶ。
「義理の妹ってどういうことですっ。」
ガターンと立ち上がって声を上げるのは1年の五色工である。
「会ったこともない遠い親戚の娘を母が引き取った。」
「流石若利君、重たいことを淡々と語っちゃうねー。」
天童覚が面白がりつつもやはり額に汗を浮かべて呟く。
「また随分な事をなさったもので。」
白布賢二郎がボソリと言うがこいつの口調は大して興味がないと言った様子だ。
「家大きい人はやることが違うってことか。」
川西太一は他に感想を思いつけずといった様子である。
「美人か。」
何気に興味を持って聞くのは山形隼人だ。
「わからん。」
「顔見てないのか。」
「勿論顔は合わせているが。」
「あー隼人君無駄無駄、多分若利君はなーんも考えてないよ。」
「近くこちらに編入してくる。その時にわかるだろう。」
チームの連中はピシッと固まった。
そうして若利の言う通り、後日全校朝礼の場で1人の少女が1年への編入生として紹介される。紹介された少女はさらりと牛島文緒と名乗り、生徒連中の多くは今何て言った、牛島だって、牛島てバレー部の、いやたまたま苗字一緒なだけじゃねなどと言いながらざわざわして、しまい目に教師に注意される。
そんな中壇上に立つ少女と3年3組にいた若利は眉ひとつ動かさず静かに立っていた。