第28章 ・繋がる
「ああ言っておきながら俺は自分でもわかっていなかった。」
「あら。」
間抜けな返事をする文緒だが他に言葉が出てこない。
「今わかった。俺もそれ以上を望んでいた。だから言った。」
その意味がわからないほど文緒は馬鹿ではなかった。返事の代わりにぎゅうと若利にしがみつき、若利もまたそっと文緒の背を撫ぜる。
「でも私達は」
ふと言いかける文緒に若利はかぶせるようにわかっていると言った。
「俺達は兄妹だ。少なくともそのように望まれている。」
「ならば」
「許されるのか否かはわからない。」
若利は更にかぶせるように言う。
「しかし気づいてしまった以上どうしようもない。」
「兄様。」
「まだ母さん達には伏せておく。お前もそのつもりでいろ。」
「はい、兄様。」
文緒は頷く。気がつけば涙があふれていた。
「何故泣く。」
「嬉しいです、兄様。」
「そうか。」
「そう思うのはいけない気もしますが、どうしても。」
「一言余計だ。」
若利が呟いた。
「俺の立場がなくなる。」
「申し訳ありません。」
「謝れという意味ではなかったのだが。」
「それはその」
「もう何も言うな。」
言う若利に文緒はもう一度抱きしめ直された。
次章へ続く