My important place【D.Gray-man】
第29章 想いひとつ
私が欲しいものをちゃんと伝えたら、それを神田はくれるのか。
…自信なんてないから言うのが怖い。
「……だんまり決め込むなよ。後5秒で言わねぇと殴るからな」
「っ!? それ思いっきりDV!」
「いーち、」
「!」
まじでか!
真顔で据わった目のまま数え始める神田が、もう時限爆弾にしか見えない。
あれ爆発したら私死ぬんじゃないかな。
死因には「理不尽な暴力」って記して下さい誰か。
「にー、」
「わっ…わかった言うから…!」
咄嗟に両手で神田の口を塞ぐ。
「か…神田だよ…っ!」
そのまま勢いで、口にした。
「他は…っ何もなくてもいいから…ッ」
絶対今、私の顔は真っ赤だと思う。
神田を直接見て言うこともできなくて、俯いて想いを吐き出す。
「神田が…っ………欲しい、…」
"好き"と口にするには、中々勇気が足りなくて。
思わず口走ってしまったけど…これも中々な発言だと思う…。
「……」
再び沈黙。
私の両手は神田の口を押さえたままだから、私が黙ってしまえば沈黙ができても仕方ないんだけど…。
……す、凄く居た堪れない…逃げ出したい…っ
「え、と…返事を期待してる訳じゃないから…っ」
逃げるように体を退く。
押さえていた両手を離した瞬間、その手首を掴まれた。
「逃がさねぇって言っただろ」
伸びたもう片方の手が、私の後頭部を掴む。
掴むというより、強く添えられてそのまま引き寄せられた。
「ちゃんとくれてやるから、しっかりこっちを見てろ」
え。
「な──」
引き寄せられるまま顔を上げて、見えた先。
一瞬黒いその目とぶつかったかと思えば、すぐに目の前はピントがずれたようにぼやけた。
あまりの顔の近さに。
そして──
「…ん…っ」
唇が、重なった。