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My important place【D.Gray-man】

第29章 想いひとつ











 これはきっと悪い夢だ





「……神田…?」





 だって

 ねぇ

 そんな訳ないでしょ

 AKUMAのウイルスだって喰らっても死なない体なのに





「神田ってば…っ」





 そんな訳ない

 死ぬ訳ない

 こんな簡単なことで

 ちょっと致命傷受けたくらいで

 ちょっと大半の血を失ったくらいで




「ねぇ、神田…ッ」





 嘘だ

 違う

 こんなのタチの悪い夢だ





「起きてよ…!」





 頭を抱いて覗き込む。
 血だらけの顔は生気を失って真っ青で、その目は瞳孔を開いたまま虚ろにピクリとも動かない。

 まるで死人のような顔。

 周りは真っ赤な血の海。
 それは全て神田の体から溢れ出したもの。
 喉元の深い傷と、肩から胸にかけてざっくりと大きく裂けた傷によって。





『…その人は、血だらけで倒れてて…体に、凄く大きな…裂け目が…』





 唐突に思い出したのは、メイリンの"占い"だった。


「ッ…」





 そんな、わけ、ない

 だって鵜呑みにするなって言ったじゃない

 阿呆って私を叱ったじゃない





 あの占いは違う

 きっと神田のことじゃない

 神田のことじゃない…ッ





『…泣いてます…誰かが…その人を抱いて』





「ッ…!」





 ──泣くな





 ぐっと歯を食い縛る。
 血だらけの顔を抱いたまま、唇を強く噛み締めた。





 ほら、泣いてないから

 私は泣いてない

 占いと違うでしょ





「っか、んだ…ッ」





 泣いてないから

 泣かないから





 自分の顔を神田に押し付ける。
 震える語尾を必死に呑み込んだ。





 私は泣かないから

 絶対に泣かないから










 だから死なないで

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