My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火.
「28番ゲートは、あの教会の中みたいですね」
「こんな夜中に訪ねて大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ。私も前に夜中にゲート訪問したことあるから」
馬車を降りてすぐ、見えてきた教会に先頭を歩いていたモヤシが振り返る。
月城が口にしているのは、恐らくあのミュンヘンでの出来事のことか。
…こいつ思いっきり暗証番号忘れてたけどな。
「ご苦労様です、エクソシスト様方。司祭のフェデリコと申します」
「こ、こんばんは」
「では、どうぞ」
「え? ええ…ミランダ・ロットーです」
教会で出迎えた司祭の差し出した手と顔を交互に見て、その手を握り返して挨拶する馬鹿な行為に、思わず呆れた。
「いえ…その…」
「?」
案の定、苦笑する司祭に貧血女はマヌケ面でぽかんと見返す。
こいつも月城同様、阿呆なところがあるな。
「握手じゃなくて、司祭の手に自分の暗証番号を指で書くんですよ」
「え?」
「これからゲート地点では毎回、味方の識別を行います。暗証番号は仲間内でも非公開が原則です。なので忘れると大変ですよ」
「えっ!?」
馬鹿丁寧に教えるモヤシと監査野郎に、貧血女の声が上がる。
やっぱり忘れてやがったか。
「ほら。任務前に8桁の番号、教えられたでしょ?」
「あ! そ、そうだったわ。すみません、私ったら。えっと…8…3、の…」
「ミランダさん声っ、出しちゃ駄目っ」
「あっご、ごめんなさい…っ」
左右から助言するモヤシと月城。
それでもいつまでも先に進まないその姿に、苛立ちが増す。
こういうトロい奴は嫌いだ。
「"暗証"の意味わかんねぇのかよ、黙ってさっさと書け!」
「ひっ! ご、ごめんなさいッ」
思わず声を荒げれば、モヤシと月城の顔が俺に向いた。
「こら、そういうこと言わない!」
「そうだよ、ミランダさんが番号間違えたらどうするの。番号間違えたらっ」
モヤシに同意する姿にはついイラついたが、どうせこいつのことだ。自分の方舟ゲートでのミスでも重ねてんだろ。