My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
「…っ」
どうしよう。
どうしたら。
こんな額の傷跡、もう絆創膏だけじゃ隠せない。
もしこの馬鹿な予感が本当で、私がノアだと知れ渡ったら、教団の皆はどんな反応をするんだろう。
そんなこと、アレンの方舟の出来事で簡単に予想できた。
きっと疑心暗鬼どころじゃない。
私を"敵"として見るだろう。
エクソシストとして誰よりもストイックで、アレンみたいにAKUMAを救おうだなんて思わず破壊している神田。
同じ被験体として生まれたALMAをも、自らの手で壊した神田。
そんな神田が、もしこんなこと知ったら──
「そんなの…嫌…」
冷たい顔で、興味ないとばかりに私を切り捨てた、モロッコでの神田を思い出す。
私を敵だと認識した神田に、拒絶されたら。そう思うと怖くなった。
嫌だ。
他の誰でもない神田だけには、そんな目で見られたくない。
神田の傍にいられたらいいと、それだけ望んでいたのに。
いつから私はこんなに欲張りになったんだろう。
バスタブの中に座り込んだまま、熱いシャワーを仰ぐ。
額に当たるお湯に僅かに傷跡が痛んだ。
「…なんで…私なの…」
答えをくれる人なんて誰もいないのに。
静かなシャワー音に混じって、掠れた問いだけが零れ落ちた。