My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「…何しやがった」
「何?」
「あいつの口でも割らせたのか…ッ」
「んなことしねぇよ。さっきセカンドくんから聞くまで、あのお嬢さんが雪だったなんて知らなかったし」
「じゃあなんでそんなことテメェが知ってんだよッ」
「なんでって、教えて貰ったからに決まってるだろ」
「…は…?」
見開く神田の目を至近距離で確認すると、ティキはにこりと笑った。
「"インペディメンタ"!」
「"エクスパルソ"!」
その空気を突如として壊したのは、同時に放たれた二つの呪文だった。
唐突にぴたりと動きを停めたティキの体に、爆発が起こる。
神田の放った爆魄斬に比べれば幾分劣るものではあったが、ティキの体を吹き飛ばすには充分だった。
「調子悪そうだね、オニーサン」
「ユキを助けに行くんだろ?何苦戦してるのさ」
神田の前に立つ二つの人影。
杖を片手に両側から呼びかけるは、双子のフレッドとジョージだった。
「凡人が出てくるんじゃねぇ…ゲホッ」
「そんな血反吐混じりに威圧されてもね」
「それに僕ら凡人じゃないから」
「…良いところで邪魔してくれるなよな…」
ひゅおりと爆風を片手で割いて、煤汚れた半身を払う。
ペッと血の混じった唾液を吐きながら冷たい目を向けるティキに、今度は双子は怯まなかった。
「ヒーローは遅れて参上するもんだって言うだろ?」
「てことでカンダ、此処は僕らに任せて。君はユキを捜しに行け」
「っ…テメェらには、関係ない」
「ユキが関わってる時点で関係あるさ」
「同盟仲間だからね」
「だから、誰であっても雪の所へは───」
行かせないと、ティキが呼びかけた時だった。
カッ!と眩いばかりの光が空に走る。
鋭い稲妻のような光線は、地響きを立てて地へと落ちた。
まるで巨大な落雷。
落ちた先は、遠目に映る国内最高峰の礼拝堂。
(あれは……まさか…)
雨も降らず雨雲一つない中、空から落ちてくる不可解な稲妻。
そもそも果たして本当に空から落ちてきたのか、ティキが不信感を覚えたのには理由があった。
13使徒のノアの中で、唯一雷に似た業を持つ者がいる。
それこそが雪の宿した"怒"のノアメモリーを持つ者。