My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「シェリル、その娘頼める?」
兄呼びを徹底していたはずのティキの言葉が変わる。
それはシェリルの義弟という仮初の立場ではなく、"ノア"としての立場に立ったからだ。
「こっちの事情に巻き込んじゃ可哀想だし。安全な場所に連れてってくんないかな」
「君も随分と彼女に熱を入れたようだね。本当に伴侶にしてしまえばいいのに」
「だから興味ないって。そういう家族ごっこは」
「なら使用人にでもするかい?そしたらできるよ。結婚という煩わしさのない、いつでも抱ける存在が」
「魅力的ではあるけど、面白味には欠けるな」
ベッドから下りて、行為により乱れてしまったジャケットを取り上げると軽く手で叩く。
「だからいいや。その娘は元いた暮らしへ返す」
ジャケットに袖を通しながら、シェリルに支えられた雪を見る。
火照った熱の行き場を失い俯き震える様は、一目見て哀れなものだ。
そこに同情は感じるものの、それ以上の感情は湧かない。
また快楽に陥れる楽しさはあるだろうが、それは別の女でも同じこと。
「じゃ頼んだ。俺はジャスデビの加勢してくるから」
「この娘を連れ出したら、僕も後を追うよ」
「それは別にいいけど……美男子エクソシストって奴は、俺に任せてくれる?」
「え?何?まさか気になるの?そっちの気もあったの?なんて素敵な」
「訳ないだろお前じゃあるまいし」
目を輝かせるシェリルを、まるで汚物を見るような目で一蹴。
美形であれば男女問わず変態思考で愛でる彼とは違うのだ。
「話したいことがあるんだよ」
ベッドの柱に掛けていたシルクハットを手に取る。
オールバックにまとめてある頭の上にそれを被せると、つばに手を添えたままティキは冷たく笑った。
「色々とね」