My important place【D.Gray-man】
第1章 prologue
私には"家族"と呼べる者がいない
否
かつて私にも父と母はいた
エクソシスト
サポーター
それが私の父と母の、またの名
エクソシストとしての能力を買われ黒の教団に身を捧げた父と、その父の為に人生をサポーターとして捧げた母は、私が物心ついた頃から遠く離れた教団内部に身を置いていた
故に私は"家族"というものを知らない
家族で食卓を囲むって、どんなもの?
休日は一緒にお出かけしたり、遊んだり
美味しい食事を作ってくれて、温かい布団で一緒に眠る
なんの見返りもなく、私を愛してくれて
なんの見返りもなく、私も愛を捧げて
ただ傍にいるだけで心が満たされる
"家族"って、きっとそんなもの
遠く離れた地に住んでいる父と母に、幼い私は何度も思いを馳せた
この聖戦がいつか終われば、きっと三人一緒に暮らせる
そんな日を思い描いて
──だけど
私には"家族"と呼べる者がいない
否
かつて私にも父と母はいた
今はその身を塵一つ残さず
戦いに身を投じて、戦いの中で散って
教団の為に生きた存在は、教団の為に抹消された
形見一つ、残すことの許されないこの世界で
私に残されたのは朧気な幼き日の記憶だけ
ねぇ、"家族"ってどんなもの?
無償の愛を捧げられる存在って、どんなもの?
ただ傍にいるだけで心が満たされて
ただ触れているだけで安心できる
我儘なんて言わない
「ただいま」と言えば、「おかえり」と返してくれて
私を迎えてくれる、そんな場所
私という存在を無償で許してくれる、そんな人
世界中で、ただの一人だけでもいい
そんな存在がいたなら
世界中で私は一番幸福なんだと
そう思えるから
もし、そんな存在ができるなら
我儘なんて言わないから
「こんばんワ、我が兄弟♡」
「ボク達、これから家族だよぉ~」
だから、お願い
「ごめんなさい、間に合ってます」
どうか"普通の家族"で、お願いします