My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
ジリリリリリッ
黒の教団にて、新しく個人に当てられた一室。
其処で鳴り響くけたたましいベルの音に、宙をふわふわと浮く淡い着物姿の男が身動いだ。
『ふぁ…マスター、朝やっしゃ…起きぃ』
人にしては蒼白過ぎる、真っ白とも言える肌に藤色の髪。
顔に縁取られているのは、青翠色の隈取模様。
意思を持つセコンドのイノセンスという、珍しい対AKUMA武器。
彼の名は憑神。
まるで幽霊の如く、ふわふわと部屋の宙を舞いながら隅に設置されたベッドへと近付く。
このけたたましいベルの音を止める役目は、主である彼しかいない。
しかしいつもすぐには反応しない主は、5分程してベルの音を消す。
それが日課となっていた。
『マスター、朝やて』
今日もまた、5分間ベルの音を聞かされながら主を呼び続ける羽目になるのか。
肩を落としながら、おーい!といつものように憑神が口元に両手を当てて呼びかけた。
すると。
『起き』
「朝だぁー!」
バチンッ!と布団の中から伸びた小さな手が、勢いよく目覚まし時計を叩き止める。
それはいつもの朝とは違う。
思わずぽかんと憑神が切れ目を見開き見守る中、弾丸の如く布団から飛び出してきたのは我らが主、ティモシー・ハースト。
「とうとうこの日が来た!おはよーツキカミ!」
『…はよーさん…なんやマスター、えらい元気やなぁ』
わくわくと明るい顔で声を弾ませ手を上げる。
そんなティモシーの傍にふわりと音もなく着地しながら、憑神は首を傾げた。
何をそんなに張り切っているのか。
『特別な日やの?』
「おう!今日は10月31日だからな!子供がタダでお菓子貰える日なんだぜッ」
『タダで?』
そんな都合の良い日などあるのか。
腕組みしながらうーん、と更に首を傾げた憑神は、はっとしたように動きを止めた。
ティモシーのイノセンスである憑神は、主である彼とリンクしている。
その小さな頭の中にある知識ならば、憑神にも備わっているもの。
子供がタダでお菓子を貰える日。
となれば、思い当たるのは一つだけ。
『マスター、それって』
「おうっ」
皆まで聞かずに尖った八重歯を見せると、ティモシーはニッと愛嬌ある顔で笑った。
「ハロウィンだ!」