My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「それで、君が盗まれたものとはなんだね」
「え?…あ、はい…」
何故ルパンは国宝を盗み損ねたのか。
怪盗Gにお説教する為だけに盗むフリをするような、そんな偽善だけで動く怪盗には見えないのに。
黙って考え込んでいると、じっと闘志を燃やすような目を向けられて顔が上がる。
…けれどその問いに顔は下がり、自分の左手首を映し出した。
何も身に付けていない、その手首を。
「私の……大切なもの、です」
"私の"…?
自分で口にしながら少しだけ疑問が湧いた。
あれは"私の"じゃない。
預かってるだけだから。
でも──…ユウが預けてくれたのは、形としての物だけじゃない。
それを身に付けるなら、私が枷になるって。
だから体だけじゃなく心で傍にいろって、そう言ってくれた。
見えない何かをくれたのは、確かだったから。
その"何か"を言葉で表現するとしたらなんなのか、それはよくわからなかったけど。
「大切なもの?…それはもしや…」
「?」
何か勘付いたように、銭形警部の顔が至極真剣なものに変わる。
え、なんだろう。
それだけで何か気付いたの?
もしかして国宝だけじゃなく、数珠もルパンは置いていったとか?
思わず期待を込めた目で見る。
「君の心を盗んでいったのか」
……。
…いや私カリオストロの城のご令嬢じゃないから。
「違います」
全くもって、違います。